第4回 4区分と遷移——危険度4区分と、上げ下げの読み方
CSIの方法(全7回)
前回(第3回)は、CSIの中身——「形」と「政策の事実」、二層の合計——を開示しました。今回は、そのCSIをどう読むかの話です。CSIは、0〜100の数値を4つの危険度区分に分類し、区分ごとに対応を変えることを想定した設計です。数値の仕事は、いまの区分の中のどこにいるか——次の境界まで、あとどれだけか——を示すことです。
4つの区分——区分ごとに、対応を変える設計
CSIは0〜100の数値と同時に、4つの危険度区分で表示されます。この計器が想定している使い方は、あらかじめ、区分ごとに対応を決めておくことです。在庫基準の引き上げ、複線化の起動、経営への報告——こうした対応をどの区分に割り当てるかは各組織の判断ですが、割り当ての単位は区分です。数値(0〜100)の構成——「形」と「政策の事実」の二層の合計であること——は、前回説明したとおりです。
| 区分 | 数値 | 平易な読み |
|---|---|---|
| 分散 | 0–40 | 供給源は複線化されている |
| 集中 | 40–60 | 偏りはあるが鎖は動く |
| 逼迫 | 60–80 | 特定の段階への依存が、全体を規定し始めている |
| 隘路圏 | 80–100 | 単一法域が鎖を実効支配 |
対応の単位を区分にしているのは、組織の対応が、段階でしか動けないからです。在庫基準も、複線化も、経営への報告も、連続的には変えられません。連続の測定値を行動につなぐには、どこかに区切りが要る——その区切りが、区分の境界です。
この設計から、読み方が決まります。対応が切り替わるのは、区分が変わったとき——遷移のときです。 1点刻みの数字を毎月追うと、意味のない揺らぎまで「変化」に見えてしまいます。切り替えのトリガーは、境界です。小さく動いても、境界をまたげば遷移。大きく動いても、またがなければ遷移ではありません。帯の中の動きは、「次の境界まで、あとどれだけか」という距離として、数値の側が毎月伝えます。
境界の40・60・80は、以下の水準を意味します。
| 境界 | 実務の目安 |
|---|---|
| 40 | 首位のシェアが、市場の条件を左右し始めるとされる水準 |
| 60 | 単独の過半が、年次の揺らぎ込みでも揺るがない水準 |
| 80 | 残りの世界をすべて足しても、穴を埋めきれない水準 |
2026年5月測定点——10物資の現在地
| 物資 | CSI | 区分 | 補記 |
|---|---|---|---|
| 球状化黒鉛 | 80.8 | 隘路圏 | 下限* |
| 重希土類(Dy-Tb) | 78.0 | 逼迫 | 下限* |
| フッ素 | 71.6 | 逼迫 | 構造スコア85.5(前回解説) |
| 軽希土類(Nd-Pr) | 64.9 | 逼迫 | 下限* |
| NdFeB磁石 | 63.9 | 逼迫 | 下限* |
| ガリウム | 62.4 | 逼迫 | 下限* |
| ゲルマニウム | 62.1 | 逼迫 | — |
| タングステン | 61.7 | 逼迫 | 下限*・国内還流率30%を明示計上 |
| アンチモン | 52.1 | 集中 | 構造スコア20.3(前回解説) |
| リン | 46.3 | 集中 | — |
下限*は「実勢はこの値以上」を示す下限表示の印です。
この一覧からは、次の点が読み取れます。「重要鉱物」と一括りにされる10物資の間には、34点の差(80.8〜46.3)があります(隘路圏1・逼迫7・集中2)。対策予算の配分や在庫基準の設定は、本来この差を踏まえて行うものであり、一括りの呼称ではこの差を扱えません。
遷移は、規程にこう書ける
遷移は、月報で↑(上位区分へ)・↓(下位区分へ)と表記します。規程に書ける形にすると、たとえばこうなります。
上がったとき: 「対象物資の危険度区分が上位区分へ遷移した場合、調達・リスク所管は臨時レビューを招集する」。
下がったとき: 「下位区分への遷移は、改定理由(次回説明する三区分)を確認した後に警戒水準を見直す」——下がった数字ほど、確認してから採用する。下向きの動きには「実態の改善」と「それ以外」が混ざりうるからです(理由は前回と第5回で)。 確認の軸は、前回の二層です——形(構造スコア)と政策の段、どちらかが高い物資では、警戒解除・備蓄放出を保留する。 これは、CSIの数値が穏やかに見える場合でも同様です。
「報道と担当者の感覚」の代わりに、月次の測定値と区分遷移をトリガー条項に記載します。これにより、事件が無い月にも、判断の根拠が存在する状態を作ることができます。第1回で述べたとおり、このような定点はこれまで存在しませんでした。区分と遷移は、この定点を実務の判断に接続するための形式です。
動かなかった月も、同じ形式で
この指数は、遷移の無かった月も同じ日に同じ形式で「遷移なし」と報告します。区分と遷移という信号の設計は、「動くべき時に動き、動くべきでない時は動かない」較正とセットで初めて機能します——その検証記録は、第5回で開示します。
出所: 財務省貿易統計(e-Stat・全数データ)、USGS等より当研究所算出。数値はすべて2026年5月測定点。
